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米国が大変です。トップが科学に不案内だとこんなに恐ろしいことがまかり通ってしまうのか。

[2025.03.19]

https://www.cnn.co.jp/usa/35230211.html こちらの記事を読んで驚愕しました。米国が大変です。

 

ビタミンA治療法の誤解とその危険性:はしか対策としての無意味さ

現在、アメリカ・テキサス州でのはしかの流行を受けて、ケネディ保健福祉長官がビタミンAを用いた治療法を推奨しています。この方策には、ビタミンAやタラ肝油、ステロイド剤、抗生物質の使用が効果的だという主張が含まれており、SNSを中心に拡散されています。しかし、小児科医として、このような方策には非常に強い懸念を抱かざるを得ません。特に、ビタミンAが「はしかを予防できる」という誤解が広まりつつある点が心配です。

まず、ビタミンAの重要性については否定しません。確かに、ビタミンAは視力や免疫系に欠かせない栄養素であり、世界保健機関(WHO)も、ビタミンAが欠乏している地域では、はしかにかかった子どもに対してビタミンAの投与を推奨しています。しかし、これはあくまでもビタミンAが不足している子どもたちに対しての対処法であり、決してワクチンに取って代わるものではありません。ビタミンAが効果的な状況は、ビタミンA欠乏症が存在する場合に限られるのです。

米国のような発展した国では、はしかの発症が非常に少なく、ビタミンAの投与に関するデータも限定的です。さらに、ビタミンAがはしかの予防に使えるという誤解を招くことは、ワクチン接種を避ける口実を与えることになり、はしかの流行を助長する危険性があります。特に、ビタミンAの投与を過剰に行うことは、逆に健康に害を及ぼす可能性もあり、注意が必要です。

また、ケネディ長官が言及したタラ肝油やステロイド剤の使用についても、その効果には科学的根拠が乏しいとされています。タラ肝油に含まれるビタミンAやDが有益である可能性があることは認めますが、はしかに対する直接的な効果が証明されているわけではありません。そして、ステロイド剤がはしかに有効だという証拠もなく、誤った治療法を広めることは、実際の治療の効果を損ねるだけでなく、患者の命を危険にさらす可能性すらあります。

テキサス州でのはしか流行のような状況において、最も重要なのは、子どもたちが適切なワクチンを受けることです。ワクチンは、はしかの予防において唯一確実な方法であり、ビタミンAやその他の治療法では決して代替できません。実際、アメリカ小児科学会は、ビタミンAがはしかを予防できるという誤った情報に反対する声明を出しています。

私たち医師は、正しい情報を提供し、誤った情報が広がらないように努めなければなりません。ビタミンAが治療法の中心となるべきではなく、むしろワクチン接種が最も重要な予防策であることを、改めて強調したいと思います。

このような誤情報が日本にも波及しないことを願うばかりです。もしも日本で同様の誤解が広がれば、将来のはしか予防に大きな影響を与える恐れがあるため、しっかりとした情報提供が必要です。

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