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ドクターズブログ

こどもの健康習慣2021(2021.10.14更新)

こちらは小児科医会のパンフレット「こどもの健康習慣2021」からの抜粋です。

小児科医の杉原です。配布できるパンフレットの数に限りがあるのと、いくつかのテーマが混在するので、いつまでも活用するためにブログにうつしかえました。

 

母乳育児の注意点

水野 克己(昭和大学小児科)

水野克己先生は杉原の大先輩です。一緒に千葉こども病院で仕事をさせていただいたときからずっと母乳の研究をされていた、おっぱい博士です。はじめて僕が学会発表をするときにもスライドをチェックして褒めていただいたことを思い出します。

 

Q.こどもの健康のためにも母乳で育てることがいいと聞きます。母乳で育てないとだめなのでしょうか・・?

A.よく母乳で育てると頭がよくなるとか、感染症にかかりにくくなるとか、言われますね。確かに最近の論文を見ても、母乳育児は川崎病やADHD(注意欠如・多動性障害)、ひいては、夜尿症(おねしょ)にも良い効果があるとも書かれています。でも、良いことがあるから母乳で育てるのでしょうか?ヒトは哺乳動物であり、本来なら、出産した母親の母乳で児が育つことは”norm”(ごく当たり前)なのです。ただ、現在の育児環境を考えると、出産したのだから、母乳で育てるのが当たり前と母親に押し付けるのは避けたいものです。母親のほとんどは、妊娠中からごく自然に母乳で育てたいと思っています。母親取り巻くみなさんが、母乳育児について知っていただき、母親が、できるだけ赤ちゃんといつも一緒にいて、いつでも赤ちゃんが欲しそうにしていたら授乳をする…ごく普通のことなのですができるといいですね。

 

Q.自分の病気のため母乳を与えることができません。こどもに申し訳ない気持ちがあります。自分にできることはありますか?

A.授乳する際に母親は赤ちゃんに話しかけたり、さすったりと肌と肌と手触れ合う以外にも五感すべてを通して触れ合います。授乳は単に母親の母乳を与えるだけの行為ではありません。逆に言えば、母乳を与えられなくても、素肌で触れ合い、声をかけ、見つめるという時間を意識してとってあげれば良いでしょう。母乳を止めた後でも、抱っこしている時に赤ちゃんが吸い付くなら、少しの間お母さんのお胸を吸わせてあげてもよいでしょう。それが立派な母乳育児です。赤ちゃんは母親からの愛をたくさん受け取り、健康に育ちますよ。

 

Q.生後1か月の赤ちゃんですが、授乳中にむせたり、顔色が悪くなることがあります。寝ているときもなることが多く、おならもよくでます。母乳だけで育てていて、先日の1か月健診でも体重も増えすぎるぐらいで健康ですよといわれたのですが、どこかわるいのかと心配しています。

A.授乳している時、反対側のお胸からも母乳がしたたり落ちていませんか?おっぱいをあげている時にむせたり、顔色が悪くなる理由の多くは乳汁分泌過多(おっぱいが出過ぎること)に伴うものです。まず、試していただきたいのは、母親がリクライニングの姿勢になり、赤ちゃんを母親の胸にうつ伏せになるようなポジションで授乳することです。軽く搾乳してから授乳する方法もあります。これらの工夫でよくなるのであれば、赤ちゃんの事を心配されなくてもよいかと思いますよ。

 

Q.花粉症と偏頭痛があります。授乳中は薬をのんではいけないのでしょうか。

A.ほとんどの薬は母乳に入りますが、その量はわずかです。母乳をとおして赤ちゃんに影響が出る可能性は低いと考えられています。もし、影響があったとしても、たいていは一過性の軽い症状で済みます。以前と違って、実際に授乳を中止するよう指示されるケースは、むしろまれなことです。断乳が必要となるのは、母乳にたくさん移行する薬で、しかも重い副作用を起こすおそれのある薬です。一部の抗がん剤や免疫抑制剤、放射性医薬品などがあげられます。つらい症状から解放されて母乳育児を楽しんでくださいね。

 

こどもの循環器疾患

伊藤 怜司(東京慈恵会医科大学小児科)

杉原メモ。新生児科の発展により、大きくなってから小学校、中学校で心臓病がみつかるということがなくなってきました。赤ちゃんのうちに超音波をあてて心臓の状態がよくわかるようになってきたのです。

Q.心雑音が聞こえると学校検診で言われました

A.心雑音とは、”ト・トン、ト・トン”という鼓動音とは異なり、”ザー、ザー”、”シュン、シュン”のような音が鼓動音とともに聴診されるものです。原因としては僧帽弁閉鎖不全や大動脈弁狭窄症、先天性心疾患などがありますが、乳幼児期に明らかな指摘がない場合には病的でない無害性心雑音、機能性心雑音が最も頻度が高いとされます。これらは小児期に一時的に聞こえるもので様々な種類があり、普段はなくても貧血や脱水症などでも聴取されることがあります。しかし、これまでに明らかな症状がなくとも心房中隔欠損症や動脈管開存症などの先天性心疾患が隠れていることがあり、専門医の判断によって心電図検査や心臓超音波検査が行われることがあります。

 

Q.こどもが時々胸が痛いと訴えます。心臓が悪いのでしょうか?

A.成人の胸痛では狭心症や心筋梗塞といった心臓病をイメージされることが多いと思いますが、こどもの胸痛の原因として心臓が原因となることは5%程度とされています。多くの場合は胸郭・筋肉に由来するものが最も多く50~80%、肺炎や気胸などが10~20%、心因性が10%、消化器が5%、原因の解らない特発性などと原因は多彩です。

胸痛の持続時間が短い、肋骨に沿って痛みがある、深呼吸をすると痛くなる、表面を触ると痛みがある、咳をすると痛くなるなどの場合は心臓以外の原因が高く、急に強い運動した、体をぶつけたなどが原因であることがあります。心臓が原因である場合、肥大性心筋症や川崎病後冠動脈後遺症などによる冠動脈虚血性変化があり、胸痛や突然死の原因となります。顔色が悪い、嘔吐を伴うなどの症状がある場合には専門医を受診する必要があります。

 

Q.心室中隔欠損症と言われています。発熱時には必ず抗菌薬を飲む必要があるのでしょうか?

A.未治療の先天性心疾患は感染性心内膜炎のリスク因子とされ、心室中隔欠損症は中等度リスクとされます。抜歯などの歯科治療は感染性心内膜炎発症のリスクとなる処置であり、処置1時間前にアモキシシリンなどの抗菌薬を服用し予防を行います。アトピー性皮膚炎や伝染性膿痂疹といった皮膚感染症、肺炎に伴い感染性心外膜炎が発生したとの報告があり注意が必要です。必ずしも発熱に伴い抗菌薬を服用する必要はありませんが、原因のはっきりしない発熱が4日以上持続する際には、感染性心内膜炎を鑑別するために医療機関を受診する必要があります。

 

Q.川崎病に罹りましたが後遺症はないと言われました。病院を受診する必要はないでしょうか?

A.川崎病は全身の血管炎であり年間約1万5千人程度が罹患し、アスピリンや大量γグロブリン治療が行われます。急性期に冠動脈瘤を含めた冠動脈病変を8%程度合併することが知られ、後遺症として2%程度残存するとされます。後遺症を生じた場合には冠動脈虚血性変化を来し、突然死のリスクがあります。一時的な冠動脈拡大を認め退縮した方でも血管のダメージが残存しており、狭心症や心筋梗塞のリスクが高いとされております。冠動脈瘤を認めなかった方が冠危険因子であるかは現時点で不明ですが、少なくとも5年間の定期経過観察を行う必要があり、管理不要となった後も生活習慣病などの冠危険因子に関する注意が必要です。

 

こどもの繰り返す発熱について

山崎 崇志(東京医科大学小児科・思春期科)

杉原メモ。保育園に入りたての子供はしょっちゅう発熱をくりかえすものです。

PFAPA症候群のお子さんはときどきいらっしゃいますね。

 

Q.子供が発熱を繰り返す場合はどんな病気が考えられますか?

A.まず感染症を鑑別する必要があります。咳や鼻水を伴うなら上気道炎を繰り返している可能性があり、発熱以外の症状がない場合は、尿路感染症や中耳炎などを繰り返している可能性もあります。その場合、尿路系の異常がないか、免疫の異常がないかなどを調べることも重要です。

 

Q.発熱を繰り返す疾患で感染症以外に考えられる病気はありますか?

A.周期性発熱症候群と呼ばれるものがあり、自己炎症性疾患がその代表です。この中には、家族性地中海熱や、PFAPA症候群などが含まれます。家族性地中海熱はまれな病気ですが、強い腹痛や胸痛などを伴う場合は疑うこともあり、専門医の診療が必要です。遺伝子検査を行うこともあります。

 

Q.PFAPA症候群とはどういう病気ですか?

A.月1回(半月~2か月)毎に4~7日間続く発熱発作を繰り返す疾患で、39~40℃台の高熱になることが多く、アフタ性口内炎、咽頭炎(扁桃炎)、頸部のリンパ節炎を伴うのが特徴です。

 

Q.どういう場合にPFAPA症候群を疑えば良いのですか?

A.高熱を繰り返し、なおかつ抗菌薬を投与しても3日以上発熱が続いてしまい、けれども一週間ほどすると熱が自然に下がるのが特徴です。特に扁桃炎を繰り返し、かつ溶連菌やアデノウイルスの迅速診断が陰性の場合には疑う必要があります。

 

Q.PFAPA症候群と診断するためにはどのような検査が必要ですか?

A.発熱時に血液検査を行うと炎症反応が高値になることが多く、重度の細菌感染症を疑われたり、川崎病を疑われたりして入院を勧められることもあります。ただ、抗菌薬への反応が悪く、咽頭培養でも病原菌は見つからず、けれども自然に熱が下がると全く元気になってしまいます。遺伝子検査などの特別な検査はなく、症状の経過などから総合的に判断する場合があります。

 

Q.PFAPA症候群は予後の悪い病気ですか?

A.通常は5歳未満の乳幼児に発症することが多く、10歳過ぎに自然に治癒することが多い予後良好な疾患です。ただ、10歳を過ぎても発熱発作が続いたり、成人で発症したりする場合もありますが、非常にまれです。

 

Q.PFAPA症候群と診断されたら治療法はありますか?

A.まず抗菌薬投与が無効であり、治療をしなくても自然に熱が下がるのが特徴です。しかし、毎月4~7日も続く高熱を認めるため、休園・休学を繰り返したり、保護者が仕事に行けなかったりで社会的負担も無視できない側面があります。主な治療法は3つあり、①胃薬(シメチジンあるいはファモチジン)の連日内服、②ステロイド(ブレドニゾロン)の頓用、③扁桃摘出です。

 

Q.PFAPA症候群に対するそれぞれの治療法を具体的に説明してください。

A.①は発熱発作を予防するために朝夕2回毎日内服します。その後、発熱発作が見られなくなることがありますが、残念ながらその確率は半数弱です。②は発熱時に1回(多くても2回)プレドニゾロンというステロイドの一種を頓用します。数時間で解熱し有効率は高いのですが、次の発熱発作を予防することができず、人によっては発熱発作の間隔が1か月毎だったものが半月毎に短縮してしまう場合もあります。③は手術になりますのでハードルは高いですが有効性の高い治療です。

 

Q.PFAPA症候群にはどの治療を選択すれば良いのでしょうか?

A.自然治癒が望める疾患ですので極論すれば何もしないという選択肢もあります。しかし、毎月のように休園・休学するのは現実的ではありませんので、①か②、あるいは両方を試されるケースがほとんどです。まず、②を試していただき、すぐに解熱するようならPFAPA症候群の可能性がかなり高いと言えます。①で効果が得られない場合は投与量や他剤併用を検討しますが、最終的には扁桃摘出を決断する場合もあります。

 

こどもの粘液のう胞

小方 清和(公益社団法人日本小児歯科学会理事)

 

Q.下唇に水胞のような出来物があります。

A.口の中の粘膜には、いたる所にだ液を作る器官があり、何らかの原因でだ液の出口がふさがり、だ液が水膨れのように貯まった状態です。粘液のう胞といい、下唇や舌の下面によくできます。痛みはありません。

 

Q.どうしてできるのですか?

A.誤って粘膜を噛んで傷がついたり、習癖や歯などによる粘膜へ刺激が繰り返されたりすることが原因で生じます。大きさは直径1cm程度にまでなることもありますが、大きくなると粘膜が破れて一時的に小さくなります。しかし破れた粘膜が治るとまた液が貯まり、腫れを繰り返すことが特徴です。特にこどもでは、気にして常に触ったり、噛んだりして、再発を繰り返すことが多い疾患です。

 

Q.治療方法を教えてください

A.手術で取り除く方法と、経過を見ていく方法があります。こどもでは、手術で粘液のう胞を取り除いても、持続した刺激で再発する可能性も高いため、まずは粘液のう胞へ刺激を繰り返さないよう言い聞かせて、経過を見る方法を選択するのが良いでしょう。粘液のう胞へ刺激を加えなかった場合、4~6か月程度で腫脹と消退を繰り返しながら自然に治ることが期待できます。大人では自然に治るまで待つよりも手術で取り除いた方が日常の生活を過ごしやすいでしょう。またこども自身が取り除くことを希望することもあるかもしれません。手術を選択することがこどもにとって最善かはよく検討をしてください。手術が必要かどうかも含めて、小児歯科、口腔外科を専門とする歯科医師に相談してください。

 

Q.手術が必要なこともありますか?

A.粘液のう胞が大きくなり、食事や会話の障害となったり、出血や炎症を繰り返したりするようなら、手術で取り除きます。のう胞内のだ液だけを取り除いてもまた貯まってしまうため、原因となる小だ液腺を含めて切り取ります。手術中に体が動いてしまう場合は、全身麻酔による手術が選択されることもあります。症状が急変する疾患ではありませんが、繰り返す症状で日常生活に障害がある場合には、小児歯科、口腔外科を専門とする歯科医師に相談してください。

 

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