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アレルギー性鼻炎・花粉症

花粉症は、スギなどの花粉が抗原(アレルギーの原因物質)となって起こるアレルギー疾患の一種です。厚生労働省の調査によると、わが国のスギ花粉症の患者数は人口の約16%に上ると推定され、この20年間急増しています。 花粉症が急増した背景には、戦後の積極的な植林による花粉飛散数の増加と、空気汚染などの生活環境の悪化があると考えられています。

これ以上花粉症患者さんを増やさないためには、生活環境などの改善が急務ですが、すでに花粉症にかかっている患者さんに対して は、QOLを高め、シーズン中少しでも快適に過ごせるように対策を立てる必要があります。毎年激しい症状に悩まされている患者さんでも、早い時期から適切な治療を受け、シーズン中も花粉を遠ざける工夫をすれば、症状 をかなり抑えられることがわかっています。最近では、経口免疫療法といった新しい治療もでてきています。

 

花粉症の種類

花粉症を引き起こす植物は多岐に渡り、日本では約50種類が報告されています。しかし、代表的なものはやはりスギで、花粉症全体の約70%を占めると推察されて います。これは日本の国土に占めるスギ林の面積(国土の12%)が大きいためでもあります。 一方、北海道ではスギ花粉の飛散がきわめて少なく、沖縄にはスギが全く生息しません。

院長である杉原もスギ花粉症がありました。石垣島勤務になって治ったと勘違いしましたが、東京勤務にもどったらまた発病したという経緯もあります。

関東・東海地方では、ヒノキ科花粉による花粉症もみられますが、スギ花粉症の患者さんが多くみられます。山梨県では、ヒノキ科花粉が多く飛散することがあり ます。関西では、スギとヒノキ科の植林面積はほぼ等しく、年によっては花粉飛散はヒノキ科花粉が多いこともあります(以上、図1参照)。

 

花粉の飛散開始時期

スギの花粉は毎年7月の初め頃から作られますが、この頃に日照りが続き雨が少ないと、花芽がたくさんできて、翌年の花粉飛散数が増加します。花芽は夏から初秋にかけて発育を続け、やがて雄花が完成し、雄花の中に花粉が作られます。花粉が完成するのは10月中旬です。スギの成長の度合い、雄花の量から 翌年のスギ花粉飛散予報がおおよそ決まります。また、この頃から少しずつ花粉が飛散することも知られており、近年の多い年では、抗原として無視できない量となりつつあります。年を越して暖かくなり始めると、雄花は開花して花粉がいっせいに飛び始めます。世界的な温暖化の影響で、今後は花粉飛散数の増加が予想されます。また、気象庁によるシミュレーションによると、関東ではスギ林密度が増加傾向にあり、今後の患者数増加が懸念されます。

花粉の飛散開始日と測定法

飛散開始日については、1㎠あたり1個以上花粉が飛散した日が2日以上続いたときに、最初の日を飛散開始日としています。飛散花粉数の測定法としては、飛散中に落下した花粉を測定器によりカウントする方法や、一定量の大気を吸引してその中の花粉をカウントする方法などがあります。花粉の数は、大量飛散日には1㎠あたり数百個に達します。

図1.主な原因植物の開花期

※北海道は札幌市、関東は相模原市、関西は和歌山市、九州は福岡市のデータ

 

鼻の機能と花粉症のメカニズム

スギ花粉症のアレルギー反応はどのようにして起こるのか

鼻の機能は呼吸する空気の「加温、加湿、防塵」です。高級な加湿空気清浄機のようなものです。それにより空気を浄化し、肺へ送る役割を担っています。花粉が鼻腔から侵入してくると、鼻粘膜上皮細胞にある繊毛がベルトコンベアのように鼻の外へと花粉を押し出しますが、押し出されずに残 った花粉は、鼻粘膜表面に付着し、抗原成分(Cry j 1,Cry j 2)のタンパク成分を粘膜に浸透させていきます。

鼻粘膜内に浸透したスギ花粉の抗原成分は、異物を認識するマクロファージと会合し、マクロファージはスギ花粉抗原の情報をT細胞へと送ります。さらにT細胞はB細胞へと情報を送り、ここで花粉に合致する抗体(スギ特異的IgE抗体)が産生されます。これがアレルギー反応の最初の段階である「感作」です。

 

スギ花粉症の症状はどのようにして起こるのか

スギ花粉症患者さんでは、IgE抗体はアレルギー発症に関与する肥満細胞の周囲にすでに結合しています。このIgE抗体が花粉の抗原成分をとらえて結合すると、肥満細胞が活性化され、ヒスタミン(Hi)やロイコトリエン(LTs)などの化学伝達物質が放出されます。これらの物質が知覚神経や血管を刺激し、くしゃみや鼻漏、鼻閉といった症状を引き起こすのです(即時相反応)。

また、このような花粉抗原との反応が繰り返されると、鼻では好酸球の増加と上皮細胞の傷害が生じ、粘膜の過敏性が亢進し、症状が遷延します(遅発相反応)。一方、花粉が結膜に付着すると、結膜表面を被う涙液により抗原が溶け出し、鼻と同様の機序でアレルギー反応が起こり、目のかゆみ、涙目、結膜の充血などがみられます。

眼がかゆい

花粉症の症状

花粉症の症状は主に鼻と眼にあらわれますが、花粉飛散開始とともに症状がみられる人もいれば、花粉が大量に飛散するまで無症状の人もいます。また、その年の花粉飛散数によっても症状の程度は変わります。飛散数が少ない年には、全く無症状のまま過ごす人もいます。また、重症の方では微熱、倦怠感感、皮膚のかゆみ、のどのイガイガ感など、全身の症状がみられることがあります。

主として、次のような症状が続く時には花粉症の可能性があります。

くしゃみ

くしゃみは外から入った異物を外に出 そうとする防御反射です。花粉症では、 連続して何度も起こるのが特徴です。

くしゃみ

 

水様性鼻汁(水性鼻漏)

鼻汁は吸気をろ過、加湿する上で重要な役割を果たしていますが、花粉症ではその分泌が亢進し、鼻からたれたり、のどに流れたりします(後鼻漏)。鼻水は水様性で、いくらかんでも出てきます。風邪でも初期は透明な鼻汁が出ることがありますが、数日で粘膿性に変わり、1~2週間で軽快します。

 

鼻閉(鼻づまり)

鼻閉は肥満細胞から分泌された化学伝達物質により生じる鼻粘膜腫脹や血流悪化によって起こります。重症化すると、両方の鼻が完全につまり、口呼吸になります。

眼の症状

激しいかゆみ、結膜充血、涙目など。

眼がかゆい


花粉症の重症度分類

わが国では、花粉症などのアレルギー性鼻炎の治療指針として、「鼻アレルギー診療ガイドライン─通年性鼻炎と花粉症─2005年版(改訂第5版)」(図2)が作成されています(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会による)。本ガイドラインでは、症状の程度(1日のくしゃみ発作回数、鼻をかむ回数、鼻閉の状態)と病型(くしゃみ・ 鼻漏型、鼻閉型、充全型)によって、花粉症を無症状、軽症、中等症、重症、最重症に分類しています。適切な治療を受けるためには、患者さんが自分の重症度と病型を把握しておくことが重要です。

 

図2.アレルギー性鼻炎の重症度分類

各症状の程度


※くしゃみか鼻漏の強い方をとる
従来の分類では、重、中、軽症である。スギ花粉飛散の多いときは重症で律しきれない症状でも起こるので、最重症を入れてある。

鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版),p25, ライフ・サイエンス; 2005.を改変

 

花粉症の診断と検査

花粉症を含むアレルギー性鼻炎の診断では、まず風邪による急性鼻炎や急性・慢性副鼻腔炎と鑑別する必要があります。鼻の3症候(鼻のかゆみ・くしゃみ、水性鼻漏、 鼻閉)がみられ、下記の検査結果が全て陽性であれば花粉症の診断は確実ですが、最終的には問診を基本とし、総合的な検査成績をもとに行います。鼻漏、鼻閉などの臨 床症状のみで、鼻鏡検査、X線検査を行わずに診断することは推奨されていません。

 

花粉症の検査の一部

鼻汁中好酸球数

鼻汁を採取し、花粉症で増加する鼻汁の中の好酸球数を検討します(図3)。

鼻誘発テスト

花粉エキスを鼻の粘膜に付着させ、花粉を吸い込んだ時と同じ状態を作り、くし ゃみなどの症状発現の有無を観察します(図3)。

※ユアクリニック秋葉原で可能な検査です。

皮内(皮膚)テスト(スクラッチテスト、プリックテスト)

花粉症の原因となる花粉エキスを腕に1滴たらし、針で軽い傷をつけ(または注射し)、皮膚の膨疹や発赤の有無をみます。費用も安価で、判定時間は15〜20分です(図3)。

※当院ではおこなっておりません。

血清特異的IgE抗体定量

血液の中の血清に含まれる花粉に特異的なIgEの値を知る検査です(CAP-RASTなど)。CAP-RASTのスコア2以上で陽性と判定されます。

※ユアクリニック秋葉原で可能な検査です。

 

図3.アレルギー検査成績の程度分類

※症状3つ:①くしゃみ発作・鼻瘙痒感、②下鼻甲介粘膜の腫脹蒼白、③水性分泌
スクラッチ(プリック)テストは施行後 15~30 分に膨疹または紅斑径が、対照の2倍以上、または紅斑10mm以上、もしくは膨疹が5mm以上を陽性とする。

鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版), p25, ライフ・サイエンス; 2005.

 

花粉症の治療

花粉症の治療法には、大きく分けて、症状を軽減する対症療法と根本的に治す根治療法があります。急激に花粉にさらされ、強い症状があらわれている場合は、症状緩和が先決となります。

対症療法

・点眼薬、点鼻薬などによる局所療法

・内服薬などによる全身療法

・レーザーなどによる手術療法
(鼻閉が強く、鼻に形態的異常がある場合など)

根治療法

・原因抗原(花粉など)の除去と回避

・減感作療法(抗原特異的免疫療法)

 

1.対症療法

対症療法で用いられる主な薬剤と特徴

対症療法で使用される薬剤には作用機序の異なるものが多種類あります。これらの薬剤を用いる治療法は、

  • 花粉症などのアレルギー疾患で増加する肥満細胞の活性を抑制する
  • 肥満細胞からの化学伝達物質放出を制限する
  • ヒスタミンなどの化学伝達物質が神経や血管に作用するのをブロックする

などの薬剤の作用により、花粉症の症状やQOL低下を緩和することが可能です。実際、作用機序の異なる薬剤を重症度に応じて適切に(単独または併用で)使い分けることにより、5~6割の患者さんは、花粉症の症状がほとんど出現せず、高いQOLを保ったままで花粉飛散の季節を過ごせることが確認されています。

 

主な薬剤

■抗ヒスタミン薬(第1世代、第2世代)
くしゃみや鼻汁が主症状である場合は、抗ヒスタミン薬(第2世代)がよく使用されます。作用は受容体に作用することにより発揮され、効果発現は数日と他の薬剤より即効的で持続 性です。副作用として多少眠気が出ることがあります。

当院では、抗ヒスタミン薬のマッピングを活用しています。眠気が自覚されなくても、集中力の低下などがみられますからなるべく副作用が少なく、効果の高い薬を選択することが重要です。

 

■抗ロイコトリエン(LTs)薬
鼻粘膜の血流を改善する効果があり、鼻閉が主症状の場合によく使用されますが、鼻汁、くしゃみの改善効果もあります。内服開始後1週目で効果が発現します。

抗ロイコトリエン(LTs)薬にはプランルカスト、モンテルカストの2種類しかありません。
1日2回のプランルカストか、1日1回のモンテルカストという選択肢ですから、通常は1日1回の薬からはじめています。

 

■点眼薬
点眼薬では化学伝達物質遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬が主体です。症状が激しいときにはステロイド点眼薬が使用されることがありますが、眼圧の上昇に注意が必要です。

抗ヒスタミン剤が効かないときに、ステロイド点眼剤を使用することがのぞましいです。当院では高濃度のステロイド点眼剤が必要な場合には眼科を受診して、眼圧などに配慮しながら処方してもらうことをお勧めしています。

 

■化学伝達物質遊離抑制薬
肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑制します。作用はmildで、効果発現に2週間程度を要します。副作用は少なく、くしゃみ・鼻汁が主症状の場合によく使用されます。

 

■鼻噴霧用ステロイド薬
鼻閉が主症状の場合によく使用されますが、くしゃみや鼻汁の改善効果もあります。局所で高い効果を発揮し、全身性副作用が少ない安全性の高い薬剤です。なお、経口ステロイド薬は効果が高い反面、全身性副作用のリスクも高く、点鼻のステロイド薬とは全く違う位置づけの薬と思ったほうがいいでしょう。

なお海外の論文ではこの薬が安全性とメリットの点で第一選択となっています。当院でも点鼻+内服から治療を開始してもらい、おちついたら、点鼻だけでコントロールができるようになっている人が多いです。

 

2.根治療法

日常生活で原因花粉を完全に避けたり、除去することは不可能ですが、少しでも体に花粉が入らないようにする工夫が、症状の悪化やQOLの低下を防ぐために必要です。また、特に重症の患者さんには、対症療法と併行して、花粉症の原因に対しアプローチする根治療法が行われる場合があります。

根治療法の代表的な方法に「減感作療法」があります。減感作療法は「抗原特異的免疫療法」とも呼ばれ、花粉の抽出液を、最初は低い濃度から注射などで投与し、その後少しずつ濃度を上げ、花粉抗原に対する免疫を獲得させる方法です(皮下免疫療法)。実際には花粉症の季節が始まる3か月前以上から始め、2年間以上続けることが必要です。

この方法により、鼻粘膜の肥満細胞数の減少が報告されています。この作用は、注射で入れた抗原がリンパ球を刺激するためと考えられています。

減感作療法の治療成績

平成17年と平成18年の日本医科大学での成績では、スギ花粉症に対する減感作療法により薬剤を使用しないで軽症、無症状で季節を過ごせた人はスギ花粉飛散の多いときでも25%以上いて、その高い効果が確認されました(図4)。また、2年間以上治療を続けた後に中止した場合でも、約70%の患者さんに効果が持続することが、患者さんへのアンケート調査などで示されています。しかし、従来の減感作療法は皮下注射に伴う痛みや簡便性の低さなどのために、日本での実施率は欧米に比べまだ低く、実施施設も専門医療機関に限られているのが現状です。

 

図4.スギ花粉症に対する減感作療法の効果

 

治療開始時期

初期療法が有効

毎年、激しい症状がみられる患者さんには、初期療法が有効です。初期療法とは、粉飛散開始とともに、または症状が少しでもあらわれた時点で薬物療法を開始する治療法で、症状の重症化を抑えられます。 ガイドラインでは、初期療法として第2世代抗ヒスタミン薬、抗LTs薬、遊離抑制薬のいずれかの投与が推奨されています(図5)。

図5.重症度に応じた花粉症に対する治療法の選択

鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会. 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版), p25, ライフ・サイエンス; 2005

 

花粉症治療の今後

期待が集まる最新の根治療法

減感作療法では、従来の注射による方法を改良し、花粉抽出液を含ませたパンや麩を用い、舌下で行う方法(舌下免疫療法)などがいくつかの施設で試みられていました。

舌下免疫療法については、スギ花粉症に対する多施設二重盲検試験が免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業(厚生労働科学研究費)の一つとして進行中で(主任研究者:大久保公裕)、現在までにスギ花粉症患者さんのQOL改善に対する効果が確認されています。

このほか、他の物質を結合させた抗原や免疫細胞が反応するペプチドを用いる方法など、さまざまな最新治療が模索されています。 安全で効果の高い新しい治療法の登場により花粉症の治癒率が増加しはじめています

 

治療はQOL重視の方向へ

根治療法により花粉症治癒への期待が高まっていますが、現状では、花粉症は一度発症すると長く付き合っていかなければならない疾患です。そのため、花粉症治療の現場では、症状を良好にコントロールするということだけでなく、患者さんの生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)や治療満足度に着目し、それらをいかに高めるかが、治療のアウトカムとして求められる傾向にあります。

 

患者さんに推奨したいセルフケア

外出時

防護具を装着し、眼・鼻をガードする

メガネやマスクを装着すると、非装着時と比べて、鼻や眼に入る花粉の数を半分以下に抑えることができます(図6)。

マスク

花粉症用のものはさらに浸入花粉数を減らすことができますが、使い勝手のよい一般的なものでもかまいません。また、コンタクトレンズを使用している人は花粉がレンズと結膜の間で擦れるので、花粉飛散期だけでもメガネに替えた方がよいでしょう。また、市販のマスクを使用するときは、湿ったガーゼを挟み込んで使用すると効果的です。

 

図6.鼻の中と眼に入る花粉数ー実験的なマスク、メガネの効果

 

鼻の中の
花粉数

結膜の上の
花粉数

マスクなし
メガネなし

1,848個

791個

通常のマスク
通常のメガネ装着者

537個

460個

花粉症用マスク
花粉症用メガネ装着者

304個

280個

日本医科大学耳鼻咽喉科 大久保公裕作成による

 

ウールの服は避ける

羊毛類の衣類は花粉が付着しやすく、花粉を屋内などに持ち込みやすいので、避けたいものです。

帰宅後は下記のことを励行する
  • 手洗い
  • うがい
  • 洗顔
  • 上着を玄関ではたく

家では

家の中でも花粉との接触を避けることが重要
  • 花粉の大量飛散日には窓を開けず、洗濯物や布団を干さない
  • 洗濯物はよくはたく

その他
  • 粘膜を傷つけるタバコは避ける
  • 規則正しい生活を送り、ストレスをためない
水や市販の洗浄液で眼や鼻を洗浄すると症状が緩和されることがありますが、花粉が逆流して戻り、かえって症状悪化につながる場合もあるため、医師に相談が必要です。

 

文責:杉原 桂

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