咽頭結膜熱(プール熱)について
咽頭結膜熱(プール熱)とは
咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルスに感染することによっておこる感染症です。このアデノウイルスの感染力はとても強く、簡単に周囲に感染が広がってしまうという特徴があります。また、アデノウイルスには種類がいくつかあるため、一度プール熱になっても、別の種類のアデノウイルスに感染すると、再びプール熱になることがあります。ただ一度感染したウイルスに対しては免疫を獲得するため、同じ種類のウイルスが原因でプール熱になることはありません。
プール熱には1年中かかる可能性がありますが、アデノウイルスは暑くて湿度の高い環境を好むため、夏場に流行しやすくなる特徴があります。特に6月頃から増えはじめ、7〜8月にピークをむかえます。プールが原因で感染することがあるのでプール熱と呼ばれていますが、実際はプールに関係しないところでも感染します。
主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。水の消毒が不十分なプールに、なんらかの理由でアデノウイルスが含まれると、プールの水を介して感染する可能性があります。プール以外の感染経路としては、プール熱にかかった患者の唾液や鼻水、目やにや便にもウイルスが含まれるため、それらを介して、目の結膜や鼻、口、喉の粘膜からウイルスが体内に侵入し、感染しすることがあります。
さらに、プール熱は症状がなくなったあとも、喉からは1〜2週間程度、便からは1か月程度もウイルスが排出されることがあるので注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)の特徴と診断
プール熱の潜伏期は5~7日です。プール熱を引き起こすのはアデノウイルス2型、3型が多く、そのほかにも1型、4型、14型などがありますが、自然に治ることが多く重症化はほとんどありません。しかしながら、7型では肺炎を引き起こし重症化するリスクがあるので注意が必要です。
症状としては、発熱(38℃以上の高熱が3~7日間程度続く)、喉の痛み(喉や扁桃腺が赤く腫れ、扁桃腺に白色の浸出物がみられる)、結膜炎(充血、目の痛み、かゆみ、目やに、まぶしく感じる、涙が止まらないなど)、吐き気、嘔吐、食欲低下、下痢などが認められます。これらの症状は3~5日間ほど続きます。
目の症状は一般的に、まずは片方の目にあらわれ、その後、反対側の目にも同様の症状があらわれます。
基本的に、プール熱は経過がよいことがほとんどですが、耳や鼻にウイルスが侵入して中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、まれに肺炎などを起こして重症化することもあります。
プール熱にかかっているかを調べる検査は主に、迅速診断キットを使う検査と血液検査があります。しかし、検査をせずに、そのときの症状や流行状況をみて診断されることもあります。
迅速診断キット
綿棒で喉やまぶたの裏側をこすって、アデノウイルスが含まれているかを診断キットで調べます。15分ほどで結果がでるので、簡単に検査することができます。ただし、検査をするタイミングや採取したウイルスが少ない場合などは、アデノウイルスに感染していても、結果が陰性になってしまうことがあります。
血液検査
採血した血液から、アデノウイルスの抗原検査をしたり、急性機と回復期のペア血清からの抗体上昇で決定します。
咽頭結膜熱(プール熱)の治療
プール熱には特別な治療方法はありません。高熱に対しては解熱剤、喉の痛みには抗炎症剤、目の症状には目薬を使うなど、つらい症状を和らげる対症療法となります。
高熱がでる上、喉の痛みや腫れで飲食がしづらい場合があるため、脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給をすることが重要になります。また、食事も刺激にならない柔らかいものにするなど、食べやすいものを摂るようにしましょう。
目の症状が強いようであれば、眼科に受診して診察を受ける必要があります。
ご家庭で気を付けていただきたいこと
集団感染を防ぐ目的で制定された学校保健安全法施行規則では、プール熱はインフルエンザなどと同じく、流行性が高いと考えられる第二種に分類され、出席停止期間は以下のように定められています。
咽頭結膜熱は、主要症状が消退した後二日を経過するまでは登校が禁止されています。
プール熱の主な症状である発熱、喉の痛み、結膜炎は3~5日間程度続くため、目安としては、症状がある間とその後2日間は登園・登校ができないということになります。
プール熱にかかる患者の6割は5歳以下とされていますが、大人でもまれにかかることがあります。特に、身近な子どもがかかったときには、感染しないよう注意が必要です。
大人がプール熱にかかった場合は、子どもとは異なり、仕事などを強制的に休まなければならないといった制限はありません。しかし、自分の体調や周囲へ感染させてしまう可能性も考慮し、症状がなくなるまでは自宅で安静に過ごすことが勧められます。
プール熱は症状が治まった後も、喉からは1~2週間程度、便からは1か月程度もウイルスが排出されることがあります。症状がでている間はもちろん、症状がなくなってからもしばらくは、マスクを着用したり、共用のタオルは使わないなど、周囲へ感染させないよう注意して過ごす必要があります。
アデノウイルスには有効なワクチンがないため、予防接種での予防はできません。
症状が疑われる場合にはいつでもご相談ください。
文責:杉原 桂