小児科ーその他
食品による窒息 子どもを守るためにできること
食品による窒息は珍しくない
窒息は、空気の通り道である気道が塞がれることです。新鮮な空気を取り込むことができなくなり、極めて短時間のうちに致命的となります。「食品」が原因の窒息は、決して珍しくありません。
なぜ窒息が起きるのか?
口は、空気と食品共通の通り道です。そのため、口の中にものを入れる(=食べる)行為は、常に窒息の危険があります。
①子ども側の要因
窒息がおきる子ども側の要因は大きく分けて2つあります。それは、「食べる(噛む、飲み込む)力」と「食事の時の行動」です。
(1)食べる(噛む、飲み込む)力
生後5~6か月頃 |
離乳食を飲み込むだけで、舌や歯ぐきで噛んだりつぶしたりすることはできません。 |
生後7~8か月頃 |
舌でつぶせる固さのものが食べられます。 |
生後9~11 か月頃(離乳後期) |
歯ぐきでつぶせる固さのものが食べられます。 |
生後12~18か月頃 |
前歯で噛み切って歯ぐきで噛める固さのものが食べられるようになります。 |
1歳半以降 |
前歯が生えそろい、奥歯も生え、手づかみで盛んに食べるようになります。前歯での適量のかじり取りや奥歯でのすりつぶしができるようになります。 |
3 歳頃 |
乳歯が完成し、ものをすりつぶすことができるようになりますが、噛む力は大人と比べて弱いと言われています。固いものはうまく噛むことができませんので、丸飲みすることにより、窒息につながる可能性があります。 |
※子どもは咳をする力が弱く、気管に入りそうになったものを咳で押し返すこと(咳反射)がうまくできません。
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(2)食事の時の行動
窒息につながる背景として、走り回って食べた、何個もほおばってしまったなど、食事の時の行動が原因と考えられる事例もあります。窒息しにくい食べ方を実践しましょう。
- 食べることに集中させる
- 水分を摂ってのどを潤してから食べさせる
- よく噛んで食べさせる
- 一口の量を多くしない
- 口の中に食品があるときはしゃべらせない
- あおむけに寝た状態や、歩きながら、遊びながら、食品を食べさせない
- 食事中に乳幼児がびっくりするようなことをしない
- 年長の子どもが乳幼児に危険な食品を与えることがあるので注意する
②食品側の要因(窒息を起こしやすい食品)
(1)丸くつるっとしているもの
表面が滑らかなために口の中に保持できず、ふとした時に飲み込んでしまって喉につまり、窒息します。
(2)粘着性が高く、唾液を吸収して飲み込みづらいもの
よく噛まずに詰め込んで食べてしまうと、大きな塊のまま喉に入って窒息します。
(3)固くて噛み切りにくいもの
十分に小さくならないまま喉に送り込まれ、窒息します。
表:窒息につながりやすい食品
下線:頻度が高いもの ※特に4歳以下の子どもが食べるときは注意が必要です
食品の形態、特性 |
食材 |
予防・注意点 |
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丸いもの・つるっとしたもの |
弾力あり |
プチトマト、ブドウ、さくらんぼ、うずらの卵、球形のチーズ、カップゼリー、ソーセージ、こんにゃく |
・1/4カットにして小さくする |
粘着性が高い |
白玉団子 |
つるっとしていて、噛む前に誤嚥するので注意 |
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固い |
あめ、ピーナッツなどの豆類、ラムネ |
4歳以上になってから |
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粘着性が高く、唾液を吸収して飲み込みづらいもの |
餅、ごはん、パン類、焼き芋、カステラ、せんべい |
・水分を摂ってのどを潤してから食べる |
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固く噛み切りにくいもの |
エビ、貝類 |
2歳以上になってから |
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リンゴ、イカ、肉類、生のにんじん、棒状のセロリ、水菜 |
・小さくする |
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弾力があり噛み切りにくいもの |
きのこ類(えのき、しめじ、まいたけ、エリンギなど) |
1cm程度に切る |
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グミ |
・4歳以上になってから |
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唾液を吸収して飲み込みづらいもの |
噛みちぎりにくい |
のり |
刻みのりを、かける前にもみほぐしておく |
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鶏ひき肉のそぼろ煮 |
豚肉との合いびき肉で使用する。または片栗粉でとろみをつける |
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ゆで卵 |
細かくして、何かと混ぜる |
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煮魚 |
味を染み込ませ、やわらかくしっかり煮込む |
食品による窒息ゼロをめざして
窒息ゼロを目指すには、窒息を起こしうる「子ども側の要因」と「食品側の要因」をできるだけ減らしていくしかありません。「子ども側の要因」+「食品側の要因」の合わさった状況を作らないようにしましょう。
4歳以下の子どもに、ブドウをそのまま食べさせるのは非常に危険です。「4歳以下の子どもには、ブドウを1/4以下の大きさに切って与える」などの対策が重要です。
もしも気道に食品が詰まってしまったら?
窒息の時のチョークサインは世界共通です。そして、急に顔色が悪くなり、よだれを垂らして、苦しそうな顔をして声が出せなくなります。
窒息状態になると、たった数分で呼吸が止まり、心停止してしまう可能性があります。すぐに119番、そして下記の応急処置を開始しましょう。
応急処置
1歳未満の乳児 |
すぐに救護者が膝を曲げ(もしくは椅子に座り)、太ももの上に子どもをうつ伏せに抱きあげ、子どもの背中の肩甲骨の間のあたりを手のひらで5~6回強く叩いて詰まった食品を吐き出させます(背部叩打法)。 |
1歳以上の子ども |
腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)を行ないます。子どもの背中側から救護者の両手を回し、みぞおちの前で両手を組んで勢い良く両手を絞ってぎゅっと押すことで、詰まっていた食品を吐き出させます。 |
【注意】口の奥まで無理に指を入れ込まないでください。
それでも窒息が解除できない場合や意識がない場合には、子どもを仰向けに寝かせ、心肺蘇生と同じように、子どものみぞおちの部分を両手拳で上の方に押す方法を行います(胸部突き上げ法)。
1歳未満の乳児 |
離胸部突き上げ法と背部叩打法を組み合わせます。 |
1 歳以上の子ども |
腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)・胸部突き上げ法・背部叩打法を組み合わせて、それぞれ各5〜6回を1サイクルとして繰り返します。 |
窒息を解除することができず子どもの反応がなくなったら、直ちに心肺蘇生を開始し、救急隊が到着するまで続けます。周りの人に応援を頼むことも忘れてはなりません。
※公益社団法人 日本小児科学会より引用
【提言】母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の現状と日本小児科学会の基本姿勢
日本小児科学会より、母体血を用いた出生全遺伝学的検査(NIPT)についての提言が出されています。
【提言】虐待による乳幼児頭部外傷(Abusive Head Trauma in Infants and Children)に対する日本小児科学会の見解
日本小児科学会より、虐待による乳幼児頭部外傷に対する見解が出されています。