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沖縄で発生した日本脳炎の記憶

[2025.03.15]

日本脳炎の記事を先日書いたのですが、その流れで恐ろしい記事を教えてもらいました。

原本はこれです。2002年に流行したウエストナイルウイルスに関連したものです。

あらすじをまとめると・・・

 

【実話】沖縄で発生した日本脳炎の記憶:ある患者の物語

1991年の夏、沖縄の米軍基地で、ある若い兵士が突然昏睡状態に陥りました。

ICUに運ばれた若き兵士

当時、私は沖縄の米国海軍病院で研修医として働いていました。ある日、ICU(集中治療室)に運ばれてきたのは、21歳の黒人米兵L・Sさん。彼は自室で高熱を発し、意識を失って倒れていたところを同僚に発見されました。

診察した彼の目は半開きで、中空を見つめたまま。すぐに挿管処置が行われましたが、どれだけ検査をしても明確な診断がつかず、「おそらくウイルス性の脳炎ではないか」と考えられました。

遠くアメリカから急遽駆けつけた彼の母親は、反応のない息子の手を握り、「この子はきっと良くなる」と自分に言い聞かせるようにつぶやいていました。

謎の脳炎の正体は?

この症例を追う中で、私は1つの疑問を抱きました。彼は沖縄に着任して数か月の新兵でしたが、発症する約1週間前まで、小隊の仲間とともに沖縄本島北部のジャングルで野営訓練を行っていたのです。

当時は梅雨の最中。雨に打たれながら水田や豚舎の近くを歩き、夜には大量の蚊に悩まされていたとのこと。そして驚くべきことに、沖縄の米軍では日本脳炎ワクチンの接種が行われていなかったのです。

日本脳炎の確定診断

L・Sさんの髄液と血清の検査結果では、当初日本脳炎の明確な証拠は見つかりませんでした。しかし、私は琉球大学医学部ウイルス学教室に検体を持ち込み、詳細な検査を依頼。その結果、日本脳炎ウイルスの感染が確認されたのです。

ところが、いくら米軍側に説明しても「これまで日本脳炎患者を診たことがない」という理由で、なかなか受け入れてもらえませんでした。沖縄ではそれまで11年間、日本脳炎の報告がなかったためです。

結局、L・Sさんは意識が戻らないまま、7月末に母親とともに米国本土へ搬送されました。

新たな患者の発生

その悲しい出来事から2か月後の8月下旬。ICUに突然呼ばれた私は、またもやショッキングな光景を目にしました。

数名の米兵が大声で叫び、痙攣を繰り返していたのです。彼らの共通点は、1週間ほど前にジャングルで野営訓練をしていたこと。

同様の検査を行った結果、そのうち2名が日本脳炎であることが判明しました。この時点で、沖縄の米軍基地で日本脳炎が流行していることが明らかになったのです。

米軍の対応とワクチン接種の開始

この事態を受けて、米国疾病予防管理センター(CDC)の調査チームが急行。大規模な血清疫学調査が行われ、約2,000人の検体を分析。その結果、沖縄に1年以上滞在した米兵の約10%が日本脳炎に感染していたことが判明しました。

そして1991年の秋、日本脳炎ワクチンの緊急接種が始まり、1992年4月までに3万5,253人の兵士に10万2,000回分のワクチンが接種されました。

日本脳炎の怖さと予防の重要性

8月に発症した兵士のうち1人は、家族に会っても誰だかわからないほどの後遺症が残り、帰国しました。もう1人は幸いにも完全に回復しました。

日本脳炎は、脳に深刻なダメージを与えることがある病気です。特に、ワクチンを接種していない場合や、蚊が多い地域での生活・活動がある場合は、感染リスクが高まります。

日本脳炎を防ぐためには、ワクチン接種蚊に刺されない対策が欠かせません。

日本脳炎予防のためにできること

  1. ワクチン接種を受ける(定期予防接種対象の子どもは特に重要)
  2. 蚊に刺されない工夫をする
    • 長袖・長ズボンを着る
    • 蚊よけスプレーを使う
    • 蚊取り線香やネットを利用する
    • 水たまりをなくして蚊の繁殖を防ぐ

まとめ

1991年の沖縄での日本脳炎の流行は、多くの命を脅かしました。この経験を通じて、私は「日本脳炎を知らないことが、感染のリスクを高める」という事実を痛感しました。

この病気は、決して過去のものではありません。毎年夏になると、日本各地(北海道を除く)で蚊による感染リスクが存在します。

今、お子さんの健康を守るために、日本脳炎ワクチンをきちんと接種し、蚊に刺されない工夫をしましょう。

 

 

実は僕は日本脳炎を発症した患者さんをみたことがない。

ちょうど、疫痢や、破傷風を発症した子どもをみたことがないのと同じように。

破傷風にかかった子を描いた映画はこちら。 小児科に関わる人はぜひみておいてほしい気持ち。

 

かつて、食物アレルギーの国際会議でワシントン州にいったことがある。(ワシントンDCではない)

そこでの通訳さんが陸軍に勤務していた関係で、軍病院の院内を見学させてもらったことを思い出した。日本にいく米兵は、日本脳炎ワクチンを全員接種するのだ、という話をそこで聞いた。

きっと上記の記事の出来事が、その準備をつくったのだろう。

蚊は相手が日本人か米国人か区別しない。

もちろん、3歳より上か下かも区別しない。

だから、日本脳炎ワクチンは3歳前から接種しておくに越したことはない、と思うしだいだ。

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