あなたにアビガンが処方してもらえないワケ。それは・・・
院長の杉原です。
新型コロナの流れはどうなってしまうのでしょう。
秋葉原の人通りはもどってきましたが、コロナ感染者数も6/26の時点で54人です。
さて、熱があるのでアビガン処方してください、と医療機関に相談されるかたもいらっしゃると思います。
が、ふつうの良心的な医療機関であれば断られると思います。
その理由について解説しておきましょう。
アビガンとは
開発した、富士フィルム富山化学株式会社のホームページより。
本剤は、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品である。本剤の使用に際しては、国が示す当該インフルエンザウイルスへの対策の情報を含め、最新の情報を随時参照し、適切な患者に対して使用すること。
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する本剤の投与経験はない。添付文書中の副作用、臨床成績等の情報については、承認用法及び用量より低用量で実施した国内臨床試験に加え海外での臨床成績に基づき記載している。
普通のインフルエンザ薬と大きくちがうのは、他の薬が効かないときだけ、使えるという点です。
その理由はサリドマイドと同じように、赤ちゃんへの奇形を誘発するからです。女性だけでなく、男性の精液にも影響します。
アビガンの効果性
感染症学会のスタンス
日本感染症学会による、COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 4 版(2020年5月28日) によれば
<ファビピラビル>
機序:ファビピラビルは効能・効果を「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症 (但し,他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」に限定して,2014 年3 月に厚生労働省の承認を受けている。その作用機序は,生体内で変換された三リン酸化体 (T-705RTP) が,ウイルスのRNA ポリメラーゼを選択的に阻害するものであることから,インフルエンザウイルス以外のRNA ウイルスへも効果を示す可能性がある。invitro でのCOVID-19 のEC50 は61.88 μM でありエボラウイルスに対する数値に類似している3)。
海外での臨床報告:中国からカレトラ®群45人と比較してファビピラビル投与群35人ではウイルス消失時間が短縮され、画像所見の改善も早かったという非ランダム化比較試験が報告されている9)。
国内での臨床報告:藤田医科大学が中心となって実施された観察研究において、2020年5月15日18時時点で、407の医療施設からファビピラビル投与患者2158例が登録された10)
。このうち入院から約1か月後までに生じた転帰が入力されている症例が1,918例であった。重症度の割合は軽症患者が976名(45.2%)、中等症患者が947名(43.9%)、重症患者が235名(10.9%)であった。投与開始から7日目での臨床的改善率は軽症例で73.8%、中等症例で66.6%、重症例で40.1%、14日目での臨床的改善率は軽症例で87.8%、中等症例で84.5%、重症例で60.3%だった。また、入院から1ヶ月時点での死亡率は軽症例で5.1%、中等症例で12.7%、重症例で31.7%であった。
また、入院から約1ヶ月後を目途の転帰については、生存退院した患者数914名(47.7%)、軽快転院した患者数180名(9.4%)、入院中490名(25.5%)、増悪転院111名(5.8%)、死亡退院223名(11.6%)であった。(4月12日の時点では、生存退院した患者数34名(18%)、軽快転院した患者数15名(8%)、入院中101名(54%)、増悪転院11名(6%)、死亡退院26名(14%))
また、日本感染症学会ホームページにも症例報告としてファビピラビル投与経験が多く共有されている。ただし、ファビピラビルの有効性を客観的に評価するには、同程度の重症度・リスクの患者がこれを内服した場合としなかった場合の臨床経過や転帰を比較することが必要である。頻度の高い有害事象は尿酸値上昇・高尿酸血症と肝障害・肝機能酵素上昇であった。これらはファビピラビルに既知の副作用であり、これまでに知られていない副作用の傾向などは見られなかった。
投与方法(用法・用量):
1.3,600 mg (1,800 mg BID) (Day 1) + 1,600 mg (800 mg BID) (Day 2 以降)、10日間、最長14日間投与。
※この投与量の設定は重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対するファビピラビルの臨床研究での投与量を参考にしている。なお添付文書に記載がある副反応については、インフルエンザに対する投与量(1日目は1,600mgを1日2回、2日目から5日目は600mgを1日2回)またはこれを下回る投与量によるものである。
投与時の注意点:
1. 上記の観察研究で見られた有害事象は頻度の高い順に、高尿酸血症・尿酸値上昇335名(15.5%)、肝機能障害・肝機能酵素上昇159名(7.4%)、皮疹・中毒疹31名
(1.4%)、下痢・軟便16名(0.7%)、腎機能障害・クレアチニン値上昇16名(0.7%)、嘔吐・嘔気・悪心11名(0.5%)、発熱9名(0.4%)、痛風8名
(0.4%)、高カリウム血症7名(0.3%)であった。
2. 投与中は血中尿酸値が正常値上限を越えて増加することが多いが、投与終了と共に正常化することが知られている。
3. 本剤投与前に患者の肝機能の状態を把握すること。
4. 肝機能障害患者に投与する場合は、投与前にリスクを十分に検討の上、慎重に投与し、投与後は観察を十分に行うこと。
5. 以下の薬剤については,薬物相互作用の可能性があることから,ファビピラビルとの併用には注意して使用する:1) ピラジナミド、2) レパグリニド、3) テオフィリン、4) ファムシクロビル、5) スリンダク
6. 患者の状態によっては経口投与が極めて困難な場合も想定される。その場合は55°Cに加温した水を加えて試験薬懸濁液を調製する (簡易懸濁法)。被験者に経鼻胃管を
挿入し,経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部X線検査で確認した後,ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。その後,5 mL の水で経鼻胃管を洗浄す
る。
7. 動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
8. 妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認した上で、投与を開始すること。また、その危険性について十分に説
明した上で、投与期間中及び投与終了後10日間(エクスパートオピニオン)はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導すること。なお、本剤の投
与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師等に連絡するよう患者を指導すること。
9. 本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後10日間(エクスパートオピニオ
ン)まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わ
せないこと。
10. 治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書での同意を得てから投与を開始すること。
11. 特に生殖可能年齢の男女に対する投与については「3. 抗ウイルス薬の対象と開始のタイミング」を遵守する。
備考:ファビピラビルの薬剤提供に関しては、厚生労働科学研究費等において行われる観察研究の枠組みの中で行われており、当該研究への参加等の手続きについては、厚生労働省の事務連絡(https://www.mhlw.go.jp/content/000625757.pdf)を参照すること。
処方できる医療機関は限られています
前の段落で最後の「備考」欄にもあるように研究グループに参加していないと処方ができないようになっています。
なので、まっとうな近所のクリニックでは処方できるはずもないのです。
訴訟リスク
とはいえ、厚労省がやっているから全て正しいということばかり、ではありません。
この藤田医科大学の研究は本当に大丈夫なのでしょうか?いくらまっても、アビガンの96人だったはずの第III相試験がおわらないのには、どうもいろいろな思惑がありそうです。
アビガンだけでなくて他の特効薬とされている薬もあわてて承認されたり、論文が撤回されたり、ときな臭いことこのうえない。
僕としては、安全性が担保されつつ、科学的な効能がうたわれている漢方薬をベースに、自分の家族にでも処方してあげられるものを、皆さんに届けたいと思っています。