12歳からの新型コロナワクチンは本当に恐ろしいのか?
院長の杉原です。
先日、岡田斗司夫さんの書籍「頭の回転が早い人の話し方」を読んでいたら思考力を鍛えるトレーニングとして、「ニコニコ生放送で、自分が出演する番組を放送する」とあったんですね。そういえば僕は「ニコニコ動画」とか「ニコニコ生放送」ってちゃんと見もせずに大した内容ではないだろうって決めつけてこれまで見たことがなかったんです。だから、ちょっとのぞいてみたんですね。
そこで見つけたのが小林よしのりさんの「若者、子どもにワクチンを打ってはいけない~心筋炎・心膜炎について」小林よしのりライジング Vo.409だったのです。
僕は医学生のころに、小林よしのりさんの一連のマンガ書籍にはまっていた時期もありました。戦争論とかエイズとか、いろいろなモノの見方が深まったような気がしているのでとても感謝しているのです。
しかし一方で薬害エイズに関していろいろ勉強していくと、当時マンガの中で悪役として描かれていた医師も決して悪意をもっていたわけでもないことが徐々にわかってきました。
(以下WIKIPEDIA)
大阪HIV訴訟弁護団弁護士の徳永信一は、2004年の第18回日本エイズ学会のシンポジウムでは「産官医の癒着」という単純明解かつ事実と乖離した「神話」の弊害が各方面から指摘された、厚生省が隠蔽したとされていた情報が実は公表されていたことが明らかとなったという例を挙げて出河雅彦(朝日新聞社)が犯人探しに終始したジャーナリズムの報道姿勢を問題視したこと、「産官医の癒着」が「薬害エイズ」の原因であるなら日本以外の先進国でも日本を凌ぐ犠牲があったことを説明することができない、当時の日本赤十字社と厚生省とのやりとりから「有事」における統制と責任の問題ではないかと指摘している[15]。
「悪いやつら」がいて、そいつをやっつければすむ、という善悪論は非常に危険だなーと思うようになりました。むしろ、システムが事故をうみだす構造になっており、そこに誰がいても同じことがおきただろうと考えるようになったのです。
そういう意味では、小林よしのりさんが誇張したイラストで人物を悪人にしたてていくのは勧善懲悪論の物語にみえてきた僕は世界の見え方が変わってきました。
ある人の意見が素晴らしいと思ってもそれはその人の解釈であり、現実とは切り離して考える必要がある。現実は100%情報があつまっているわけではない。いろんな立場の人の意見を集めていくと、そこに現実らしき情報がみえかくれしはじめます。
それにもとづいて、それぞれの人の解釈を眺めると、バランスを著しくうしなった考えや行動に溺れてしまうことは少なくなるだろうと思うのです。
そういう視点で今回の「若者、子どもにワクチンを打ってはいけない~心筋炎・心膜炎について」小林よしのりライジング Vo.409をみると未だに一方的なものの見方しかできてないのではないか、と一人のファンとして小林よしのりさんが心配になりました。
今回のテーマである、12-15歳への新型コロナワクチンを接種すべきかどうか、という論点について僕の見解を述べておきたいと思います。
まず事実。(これも小児科学会の声明から切り出したものですが)
国外での小児(12~15歳)を対象とした接種経験等1)をもとに、わが国でも2021年5月31日に12歳以上の小児へのワクチン接種が承認されました。
同年6月1日から適用2)となりました。
2021年8月20日現在、12歳以上の小児への接種が承認されているワクチンはファイザー社製と武田/モデルナ社製で、12歳未満の子どもに接種可能なワクチンはありません。
国内では小児に対するワクチン接種後の副反応に関する情報はありません。
一方で、国内の医療関係者約2万人へのワクチン接種後の重点的調査(コホート調査)から、接種部位の疼痛等の出現頻度が高く、若年者の方が高齢者より接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応を認める割合が高いことが明らかになっています。
1)Frenck Jr RW, Klein NP, Kitchin N, et al.: Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents. N Engl J Med. 2021 in press. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.
2)厚生労働大臣:「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施について(指示)」の一部改正について . 厚生労働省発健0531第4号令和3年5月31日. https://www.mhlw.go.jp/content/000786653.pdf(2021年6月9日アクセス)
で心筋炎についてのデータはどうなの。って思われるかもしれません。
COVID-19によっても心筋炎・心膜炎を引き起こすことが知られています。
そもそも普通の風邪から心筋炎・心膜炎おこすこともあるわけで。
軽症の場合も多いのですが自分では二人の患者さんを急性心筋炎で失った経験があります。
僕の話で怖くなってしまった人もいると思うのですが、きっと自覚症状が軽くてほっておいて治ってしまっている人もいると思います。
しかしワクチン後ですと、この自覚症状に敏感になっていることが考えられます。コロナになってからものすごい数の患者さんが胸が苦しい感じがする、呼吸が苦しい気持ちがしたという訴えで受診することが実際に増えています。そのほとんどが検査しても異常なしという病状です。
そういう背景では見つけやすくなっていることが1つ。
もう1つは、前後関係と因果関係というはなしです。
ワクチン接種後に風邪をひくことだってあるでしょう。しかもワクチンうつ前から(ふつうの風邪)ウイルスはもらっていてワクチン接種後に発熱したり、ワクチン接種翌日に発熱することだってあるわけです。これは前後関係であり、コロナワクチンのせいでおきた発熱ではないのです。
そういうことも踏まえた人がつくってくれたデータをみてみると
新型コロナワクチン接種後の発症リスク:100万人中5~20人程度
新型コロナウイルス感染そのものでの発症リスク:100万人中6000~23000人程度
Diaz GA, et al. JAMA 2021.PMID: 34347001
Results From the Big Ten COVID-19 Cardiac Registry. JAMA Cardiol 2021
つまり、ワクチン接種しないとき メリットは100万のうち5-20人しかおきないレベルのリスクを減らせることです。デメリットは新型コロナにかかるリスクがさげられないし、自分が症状軽くても周りに伝達させる役割になってしまうということです。
ちなみにそばアレルギーなどは0.4%の罹患率なので100万人に4000人が発症します。(そのうちアナフィラキシーが約4%なので160人程度)
100万に10人起きる可能性のリスクを受け入れらない人は明日からそばをたべてはいけません。毎回ワクチンをうつよりもリスクが高いことをしているわけですから。
ワクチン接種するときのメリットは新型コロナの発症率を確実に下げる。すなわち、それにともなう心筋炎のリスクも下げるということですし、周りの人への二次感染も抑えられます。
デメリットは副反応に加えて、ワクチン反対派から責められたり不安にされてうつ病に近づくことでしょうか。
とあるようなので、僕なら間違いなく自分の子が12-15歳でもワクチン接種を勧めます。
最後に、子どもへの気もちを知人の守屋章成先生が平易な言葉で表現してくれているので引用しておきましょう。
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私には離れて暮らす10代の子どもが2人います。 彼らのもとには残念ながらまだワクチンの接種券すら届いていません。
コロナ禍ですっかり会えなくなったので,第5波とワクチンについてメッセンジャーアプリで下記のようなメッセージを送りました.
8月はじめのことです。
やや厳密さを欠いたり単純化した言い方もしていますが,メッセンジャーアプリで子ども向けにわかりやすく書いたものとしてご容赦ください。
子ども達は2人とも「ワクチン打つよ!」と力強く返信してくれました。 1日も早く彼らにも接種順序が回ってきますよう。
■今回の第5波は過去最悪だった第4波の3倍以上の感染者数になるよ。しかも、高齢者は大半がワクチン済みなので、感染者の殆(ほとん)どは赤ちゃんから50代まで。一番多くなるのは20代。
■病院は日本中であと数日したら満杯になる。すると10代や20代でも病院に入院できずに亡くなる人が出るかもしれない。
■アジアの某国から命からがら緊急帰国した人たちを検疫でお預かりしてるんだけど、その人たちから「20代の日本人が現地でデルタ株に感染して、医療崩壊した現地でどこの病院にも診てもらえないまま亡くなった」って、涙も凍る話を聞いたばかり。
■デルタは「もはやコロナではない」と言いたいぐらいに別の病原体になっちゃった。
■潜伏期間はアルファが平均5日ぐらいだったのがデルタは平均3日ぐらい。でも最長14日。検疫やってても帰国後10日目に陽性になる人珍しくないからね。
■最初のコロナウイルスは1人の感染者から平均2.5人に感染させてた。でもデルタは1人から5-9人に感染する。全然次元が違う。
■ワクチン済みの人も結構感染しちゃってる。ただし、幸いに重症化はしてないよう。それもワクチンの効果。割合としては、感染者の95%ぐらいがワクチン打ってない人。
■「今までと同じ気を付け方」で感染しちゃう人が続出中。例えば「スーパーマーケットにいつものように短時間買い物に行ったぐらいしか感染経路が思い当たらない」みたいな人も出てる。恐ろしい。
■忘れちゃいけないのは、報道発表で「軽症」ってのは「入院させて大量酸素投与まではしなくて済んでる」のレベルだからね。
現実の症状はインフルエンザの10倍ひどい。
40℃が7日間、咳が寝ても起きても止まらなくて眠れない、全身死ぬほど痛い、水飲むのもしんどい。
でも酸素測ったらどうにか92%あるから、入院は後回し。 これが「軽症」。
■ワクチン打ったけど感染しちゃった人は、これよりは軽い。本当の意味で「軽症」と呼べるレベル。でもしんどさはインフルエンザ並みと思った方がいい。
■最悪の場合、ごくごく少ない人数だと思うけど、小学生や中学生でも亡くなる子が出るおそれすら否定できない。
ワクチン接種で打ってない人に比べ5分の1までかかりにくくなる
■ワクチン打つとデルタは80%ぐらいの予防効果。つまり打ってない人に比べて5分の1までかかりにくくなる。
■お父ちゃんはワクチン打ったから、運悪くかかったとしても、たぶんひどいことにはならないし、ほぼ死なない。
■まだ打ってない大人は、50%の確率でむちゃくちゃひどい症状(でも「軽症」扱い)になって、5%の確率で大量酸素や人工呼吸やECMOが必要になって、1-2%亡くなる。
■問題は、5%の状態になったときに病院に空きがあるかどうか。
■とにかく、感染しないで。今までと同じ注意だと感染しちゃうから、今までよりも自分に厳しく。
■残念だけど、「いつもの友達」とも遊ぶのはキャンセルしてね。マスクありで一緒に部屋の中でゲームするだけでもあっさり感染するウイルスになっちゃった。
■ワクチンのチャンスが回ってきたら、是非打って。もう身体は大人同然だから、重症化したり死ぬリスクも大人と同じ。 死ななかったとしても、若いが故にとにかくひどい症状になるし、何カ月も続く後遺症にもなりやすい。
■若い子がコロナにかかると、2%は心筋炎になる。心筋炎ってのは心臓がダメになること。突然死もする。
■10-20代の人がコロナワクチンを打つと、男の子の場合で100万分の40、女の子の場合で100万分の4の確率で、副反応(副作用)としての心筋炎になっちゃう。 それは心配だけど、コロナに感染したら100万分の20,000の確率で心筋炎になっちゃう。
■コロナワクチン打たずに感染して100万分の20,000で心筋炎になるか、コロナワクチン打って副作用で100万分の40とか100万分の4で心筋炎になるか。
■お父ちゃんとしては、君たちにもワクチン打ってほしい。死んでほしくないし、むちゃくちゃ苦しい症状になって欲しくないから。
■100万分の40とか4の確率で心筋炎になるのは接種から3-4日以内。だから心臓への負担を避けるために、接種から1週間は激しい運動を避ける。これまで研究報告された中では、接種後心筋炎の全員が軽症で良くなっている。
■「感染しなければ大丈夫」ではある。そりゃそうだ。ところが、デルタは「マスクつけてても誰かにしばらく近付いた」だけで感染するぐらいに別次元のウイルスになっちゃった。だから「感染しなければ」が通用しにくくなっちゃった。
■お父ちゃんは医者であるおかげで、人様よりも早くワクチンを打つことができた。本当にありがたい。間もなく君たちにも順番が回ってくる。地元の役所からお手紙が届く。是非打ってほしい。
■お父ちゃんは今コロナワクチンに日本で一番詳しい医者たちの1人のつもりです。プロ中のプロのつもりです。そのお父ちゃんの願いとして聞いて欲しい。
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あなたは一人のマンガ家の意見をきいて自分の子どもや家族の命を危険にさらしますか。
それとも専門家の意見をきいて判断しますか。
追記 2021/09/11
いまこの瞬間どっちかに決めろと言われたら接種を勧めるのですが
心配ならちょっと待ってもいいんじゃない、という大人な意見をみてこの先生を見習おうと思いました。
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やっぱり自分がどう判断するかはともかく、自分の判断を他人に強制する時代ではないと思うのです。
それが科学的に正しくとも。いや正しいときこそ、強制はあんまりよくない気がする。
それは先端恐怖症で針がこわい子に無理におさえこんでワクチンをうつようなことかもしれないし
飛行機恐怖症の人をむりやり飛行機にのせるようなものかもしれないのですから。