小児科専門医による新型コロナウイルス感染症に関する Q&A11連発!
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
新型コロナウイルス感染症に関する Q&A より
(2020 年 5 月 1 日現在)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的に感染の拡大が認められ、日本における患者も全国的に増加し 2020 年 4 月 7 日には緊急事態宣言が発令されています。子どもの患者数は成人に比較すると少ないですが、国内においても増加しており、子どもの感染者を想定した診療が必要になっています。また、感染対策は重要ですが、可能な範囲で通常の日常生活を続けることも子どもの成長や発達には不可欠なことです。
当委員会では、現時点で想定される子どもの患者に関する疑問について Q&A を作成いたしました。なお、本見解は現在の疫学情報、数少ない報告や、過去の新興コロナウイルス感染症(SARS、MERS)を踏まえたものであることにご留意ください。また状況に応じて内容は、随時更新される可能性があります。
Q1.子どもが新型コロナウイルスに感染するとどのような症状がでますか?
A:現時点(2020 年 5 月 1 日)で、子どもの感染者数は成人と比べると少ないですが、感染しやすさは成人と変わらないこともわかってきました。家庭内で感染している例が多く、発熱、乾いた咳を認める一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ないとされています。成人と同じように、発熱が続き肺炎になる例も報告されています。一部の患者では嘔吐、腹痛や下痢などの消化器症状も認めるようです。
成人で報告されている嗅覚や味覚の異常が子どもで認められるかは今の時点では不明です。また、発疹やしもやけ、川崎病のような症状も欧米諸国から報告されていますが、国内からの報告はまだありません。
感染していても無症状である可能性も指摘されていますが、子どもは正確に症状を訴えられないことに注意しなければなりません。
Q2. 子どもの新型コロナウイルス感染症は重症化しますか?
A: 子どもの患者が重症化する割合は成人と比べると少ないようです。しかし、成人同様に呼吸状態が悪くなることもあります。2歳未満の子どもは比較的重くなる傾向があり注意が必要です。
Q3. 小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもに関して特に注意すべきことはありますか?
A: 一般的に小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもの呼吸器感染症は重症化する可能性があります。ただ基礎疾患ごとにリスクや対応は異なりますので、かかりつけの医師にご相談ください。また、周囲の人が感染しないように気を付けることが重要です。
Q4. 母乳はやめておいた方がいいですか?
A: 母親が感染している場合は、接触や咳を介して子どもに感染させるリスクがありますので、直接の授乳は避ける必要があります。母乳自体の安全性については現時点では明らかではありませんが、中国からの報告では、感染した女性26名の母乳を調べたところウイルスは検出されなかったとされています。従って、母親が解熱し状態が安定していれば、手洗い等を行った上で搾乳により母乳を与えることは可能と思われます。
Q5. 子どももマスクはしておいた方がいいですか?マスクが出来ない場合はどうしたらいいですか?
A: 感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観点からは、マスクをすることの利点はあるかと思いますが、小さな子ども(杉原注:3歳未満くらいをイメージしてください)では現実的ではないと思われます。子どもの患者のほとんどは、家庭内において保護者から感染していますので保護者の方が感染しないこと、感染した方から 2 メートル以上の距離を保つことが子どもの感染予防につながります。
また、ウイルスに汚染されたおもちゃや本などに触れた手で、口や鼻、目を触ることでも感染しますので、手洗いや消毒も大事です。
Q6. 子どもの症状が新型コロナウイルスによるものかもしれないと思ったら早めに医療機関を受診した方がいいですか?
A: 現時点(2020 年 5 月 1 日)において、国内で新型コロナウイルスに感染している子どもは徐々に増えつつありますが、ほとんどは家庭内で保護者からうつったものです。また、他の病原体による感染症の可能性も十分ある状況です。地域による差がありますので、お住いの地域の保健所などの情報にご注意ください。
実際には、新型コロナウイルス感染症を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診療所等を受診しても、診断を確定するための検査はできません。むしろ受診によって新型コロナウイルスの感染の機会を増やす危険性もあります。
さらには、新型コロナウイルス感染の軽症者に対する特別な治療法はありません。今の段階では、呼吸数が多い、肩で息をする、呼吸が苦しい、唇や顔の色が悪いなど、肺炎を疑う症状があり、入院が必要と考えられる場合を除いては、新型コロナウイルス感染症を心配して医療機関を受診することはお勧めできません。
なお、子どもでは、原因不明の発熱が続く、呼吸が苦しい、経口摂取ができない、ぐったりしているなどの様子が見られるときは、様々な病気が考えられますので速やかに医療機関を受診してください。ただし、子どもであっても濃厚接触者や健康観察対象者である場合は、まず地域の帰国者・接触者相談センターにご相談ください。
Q7. 病院における面会は遠慮したほうが良いですか?
A: 病院によって面会基準は異なりますので、病院にご確認ください。面会が可能な場合は、面会者の方は、自宅で体温を測り、咳、鼻汁、下痢、嘔吐などの症状がないことを確認した後、子どもの面会前には、手洗いとマスク着用などの感染対策を守ることなどの協力が必要です。新型コロナウイルス感染症に感染した子どもへの面会については次の Q&A をご参照ください。
Q8. もし子どもが新型コロナウイルス感染症にかかった場合、入院は必要ですか?また、入院した場合に保護者の面会や付き添いは可能ですか。
A 子どもが新型コロナウイルス感染症にかかった場合、ほとんどの場合は軽症で医学的には入院する必要はありません。また、ほとんどの場合は家庭内で保護者から子どもにうつったものになりますので、隔離を行う目的で子どもを単独で入院させるケースは限られると思われます。したがって、軽症の場合は自宅あるいは宿泊施設等での療養となる可能性があります。ただし保健所との相談が必要であり、また自宅療養後も電話等による健康状態の確認が必要になります。
なお、軽症の目安は、本人に活気があること、水分等が取れていること、呼吸が苦しくないこと、などですが医療者の判断が必要です。子どもの具合が悪く入院が必要な場合は、保護者は感染者あるいは濃厚接触者である可能性が高く、病院への来院や面会が出来ない可能性があります。しかし、保護者が既に回復されている場合など個々の状態を加味して、病院の診療体制や地域の流行状況などとあわせて、異なる対応が予想されますので、担当医とご相談ください。
*詳しくは日本小児科学会からの提言をご覧ください
http://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=114
Q9. 保育所、幼稚園、学校などに行くことは控えたほうが良いでしょうか
A: 子どもへの感染の多くは同居している成人(保護者)感染者からの伝播によるものです。現時点(2020 年 5 月 1 日)では保育士からの子どもへの感染や子ども同士の感染は少なく、保育所、幼稚園、学校などへの通園、通学を自主的に控える理由はありません。しかしながら、地域で子どもの患者が発生した場合、またはそれが想定される場合には、一定期間、休園や休校になる可能性があります。今後の流行状況に応じて、臨機応変な対応が必要となりますので、お住まいの地方自治体からの
指示に従ってください。
また、各家庭内で感染者がでた場合は、その子どもは濃厚接触者として登校、登園を控えることになります。また、厚生労働省から微熱や風邪の症状がある場合は、登校、登園を控えるようにとすすめられています。それらを守っていただくことが大事です。
Q10. 学校が休校となりましたが、子どもは外出や友達と遊ぶことを避けたほうが良いでしょうか?
A 子どもにとって遊ぶことは、心身の発達においてとても重要です。感染のリスクを下げるために以下のことを守れば、外出や子ども同士の遊びは可能です。
外出自粛要請が出ている地域では以下のことを守りましょう
・同居しているきょうだい、家族等同士で遊ぶこと
・屋外では、他人との接触を避けること
〈屋外における遊び〉
屋外の遊びであれば感染伝播のリスクは低いと考えられますが、以下の点を確認し注意して下さい。
・風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)があるときは、外出は控える
・みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
・飲食の前にも手洗いをする
〈屋内における遊び〉
屋内における遊びについては、屋外よりリスクが高くなりますので、以下の点を確認し注意して下さい。
・周囲に明らかな感染者がいない
・遊ぶ場所に高齢者や基礎疾患のある方がいない
・本人や家族に風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)がない
・少人数である
・保護者同士の了解が得られている
・みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
・飲食の前にも手洗いをする
〈屋外・屋内で遊ぶ際に起こりやすい事故への対応・予防策〉
こちらをご参照下さい。
http://kodomo-qq.jp/jiko/index.php (日本小児科学会 こどもの事故と対策)
Q11. 乳幼児健診や予防接種を遅らせたほうが良いですか?
A 乳幼児健診の目的は、年齢ごとに起こりやすい病気や問題を早めに見つけて治療などに結び付けることです。予防接種についても、感染症にかかる前に接種することが極めて重要です。
新型コロナウイルス感染症を予防するための対策も重要ですが、極端な制限によって予防できる他の重要な病気の危険性にさらされることを避ける必要があります。今後も数か月単位での流行が想定され、その間に乳幼児健診や予防接種を回避するデメリットは大きいと考えられます。
乳幼児健診や BCG などの予防接種を集団で実施している市町村でも、地域の流行状況により柔軟に対応しているところもあります。保健所や保健センターに確認してください。
集団・個別に関係なく、一般的な感染症対策として、子どもや付き添いの保護者の方については、発熱や咳などの症状がないことを確認して受診ください。付き添いの方については手洗いを行ってマスクを着用してください。
また、可能な限り、きょうだいや祖父母などの同伴を避けること、健診や予防接種の会場や医療機関でオムツを替えないこと(新型コロナウイルスは糞便中に排泄される可能性が指摘されているため)も心がけてください。