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こどもと女性のためのビタミンD

[2025.03.28]

尊敬する、白銀台の小児科医 時田先生からおすそわけいただいたビタミンDの大切さを説いたパンフレットをこちらにも転載しておきます。

はじめに

ビタミンDは1922年にアメリカのMcCollumが抗くる病因子として命名した脂溶性ビタミンで、発見から100年が経ちました。

 成長期にビタミンDが不足すると、骨が軟らかくなる「くる病」の原因になります。発症すると、歩き始める一歳過ぎからO脚(図1)などが見られるようになり、血液中のカルシウム濃度が低下してけいれんを起こすこともあります。また近年「生理的O脚」といわれ経過観察されていた現象にビタミンD不足が関与していることが報告されました1)

 

図1 O脚

くる病

図1 O脚

紫外線とビタミンD

骨や歯を強くし、感染症予防にも役立つ「ビタミンD」は特に成長期の子どもには欠かせない栄養素です。ビタミンDは日光によって皮膚で合成されるものが約9割を占めると言われていて、太陽の紫外線(UV)を浴びれば自分で作ることができるほか、食事でとることも可能です。

 

特に女性は皮膚の「しみ」などを恐れ、少しの外出でも日焼け止めを塗るなどUVを避けすぎる傾向があります。さらに過度のUVは皮膚がんのリスクがあるとして、1998年に母子健康手帳から日光浴を勧める記述が消えたことを受け、親子そろってビタミンD欠乏になっている例もあります。

紫外線による体内でのビタミンDの産生を促すことは大切です。適度な紫外線の照射量を知るには、名古屋や横浜など全国11カ所ごとに、日焼けをすることなく、必要なビタミンDが生成される時間を載せている国立環境研究所のウェブサイトが参考になりますのでご紹介致します。

 

母乳栄養とビタミンD

乳児では離乳まで赤ちゃんを母乳だけで育てている場合は、特に注意が必要です。多くの栄養素が加えられた育児用ミルクに対し、母乳にはビタミンDがあまり含まれていないからです。

 

現代でも、東北地方では母乳栄養児において高率にビタミンD欠乏が存在することが報告され2)3)、ビタミンDサプリメントを補充することで欠乏が改善することが報告されました。東京と静岡県の生後0~6カ月の乳児について血液中のビタミンD濃度を測定した報告でも、母乳栄養児の75%がビタミンD不足だったことが報告されています4)。(図2)

 

海外では、様々な食品にビタミンDが添加されていますが、日本ではまだ一般的ではありません。諸事情でしっかりUVカットをしなければならない成人の方は、食事はもちろん、サプリメントを利用して補充することをお勧めします。赤ちゃんから大人まで、日光浴や食事で1日に補いたいビタミンD量は5~10μgです。

 

梅雨や冬場、猛暑で外出が減るなど日光浴が足りない場合は、ビタミンDを多く含む魚やキノコ類などを食べることも大事です。乳幼児では離乳食を取り始めるころから、ベニザケやサンマなどを食べさせましょう。シラス干しは湯通しして塩を抜いてから、干しシイタケはそのまますりおろせば、おかゆに入れたりスープのだしにしたりと幅広く使えるのでお勧めです。お子さんでも離乳食がなかなか進まない、アレルギーによる食事制限などで必要な量を補えない場合は、ビタミンDサプリメントを利用するのも一つの方法です5)

 

骨以外の病気とビタミンDの関与

さて、ビタミンDには従来知られてきた骨代謝に関与するビタミンD作用以外に、ビタミンD受容体が全身に存在することから、骨組織以外へのビタミンD作用として

①血管内皮細胞(血圧、血栓)

②膵臓(糖代謝)

③神経細胞(自閉症、認知症、神経失調)

④免疫細胞(免疫制御、アレルギー)など、

骨以外の様々な疾患に関与することがわかってきました。

海外では公衆衛生学的な見地からも、ビタミンD摂取の啓発が進んでいます。一方で日本では日本人女性の98%がビタミンD不足であることが報告されましたが6)、ビタミンDの必要性についての認知度は低いと言わざるをえません。日本小児科学会からも最近ようやく「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」が発表されました7)

ビタミンDサプリメント

成人向けのビタミンDサプリメントは数多く市販されていますが、母乳育児支援にもなる乳幼児用液体ビタミンDサプリメントが、日本に登場してから約10年経ち、少しずつ知られるようになりましたが、同一メーカーから2種類販売されており、現場では混乱が生じているようですので、違いを列記致します。

(表1)日本で販売されている液体型ビタミンDサプリメント

  ベビーD200 ベビーD
  (医療機関専売品) (栄養機能食品)
ビタミンD含有量 1滴あたり5μg 1滴あたり2μg
内容量 4.2g  (90滴)  4.2g (90滴)

メーカー希望小売価格

1944円  

購入可能場所

調剤薬局 森下仁丹オンラインショップ amazon

おわりに

ビタミンDは紫外線(UV)によって皮膚で合成されるものが9割を占めますので、十分な紫外線を浴びればビタミンD不足が生ずることはないのですが、先進国の女性の日光忌避がビタミンD不足の主因です。母乳にビタミンDが少ない理由は不明ですが、太古の昔より親子共に充分な紫外線を浴びることのできた人類は、母乳にビタミンDが出る必要がなかったと推測されます(図3)。  ビタミンDの重要性は多岐にわたり、妊娠を含む女性の健康に大きくかかわっていることが明らかになってきました。母乳栄養児へのビタミンD投与のみならず、女性のライフコース・ヘルスケアの向上に向けてビタミンDの重要性について皆様の理解が深まることを願っています。

文献

  1. Sakamoto Y. Ishijima M. Kinoshita M. et al. Association between leg bowing and serum alkaline phosphatase level regardless of the presence of a radiographic growth plate abnormality in pediatric patients with genu varum. J Bone Miner Metab 2018:38:447-453.
  2. 冨本和彦.北日本の一地域における母乳栄養児のビタミンD充足状態評価.日本小児科学会雑誌 2018;122:1563-1571.
  3. 冨本和彦.ビタミンD不足状態にある母乳栄養児における適切なビタミンD補充療法.日本小児科学会雑誌 2018;122:1683-1691.
  4. Nakano S. Suzuki M. Minowa K. et al. Current vitamin D status in healthy Japanese infants and young children. J Nutr Sci Vitaminol 2018:64:99-105.
  5. 時田章史.川尻由美子. ビタミンDの補充をどうするか 外来小児科 2021:24:115-120. 
  6. Miyamoto H. Kawakami D. Hanafusa N. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry. J Nutr. 2023:153:1253-1264
  7. 川井正信、位田忍、北中幸子 他. 乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言日児誌 2025:129:494-496.

 

<投与の目安>

ほぼ母乳中心の方は、ベビーD200を1日1回2滴

混合栄養(母乳:ミルク=1:1)の方はベビーD200を1日1回1滴

 

<投与方法>

投与する方の指先を清潔にしてから、ベビーD200を指先に垂らし、赤ちゃんに吸わせる(あるいはなめさせる)ようにしてください。

 

★ごく稀に、特発性高カルシウム血症(食欲不振、体重増加不良などが主な症状)、ウィリアムズ症候群など、もともと高カルシウム血症をおこしやすいお子さんがいますので、投与を開始する際には医師と相談してからにいたしましょう。

★成人の方で、紫外線を避ける習慣がある方は1日2滴内服をお勧めします。(すでに様々なサプリメントをご利用の方は、薬剤師、医師にご相談ください。)

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