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フォローアップミルクは米・新ガイドラインでは非推奨…日本の乳幼児は栄養不足?

[2020.02.07]

フォローアップミルクは米・新ガイドラインでは非推奨…日本の乳幼児は栄養不足?

この原稿はAERA dot.(10月2日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2019092600077.html?page=1

Child Health Laboratory代表
森田麻里子

2020年2月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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乳幼児期は、健康的な食習慣や味覚を身につけるために大事な時期です。特にアメリカでは、肥満や生活習慣病が子どもでも問題となっており、病気を予防するためにどのような食が乳幼児期に適しているのか、議論が進んできました。以前は肥満といえば脂肪が槍玉に挙げられていましたが、最近では砂糖の悪影響を指摘する声も強くなっています。

そこで先月発表されたのは、乳幼児期の飲み物についての新しいガイドラインです(※)。

食事の中でも、乳幼児期の栄養摂取で大きな割合を占めているのは飲み物です。以前からアメリカ小児学会を中心としていくつかの推奨は出されていましたが、今回のガイドラインはアメリカ栄養士会、アメリカ小児歯科学会、アメリカ小児学会、アメリカ心臓協会の専門家が合同で、改めて作成されています。そのポイントは、

1)牛乳は1歳を過ぎてから、1日にコップ2~3杯
2)フルーツジュースは1歳を過ぎてから、1日にコップ半分~1杯程度まで
3)その他の甘い飲み物、フォローアップミルクは推奨されない

というものです。なかなか厳しい基準だと感じました。日本では、アメリカほど子どもの肥満や生活習慣病が問題になっているわけではないですし、栄養摂取状況も違いますから、このガイドラインが完全に当てはまるわけではありません。しかし、日本で子育てする私達も参考にしたい点がありましたので、解説していきたいと思います。

まず、牛乳についてです。乳児に勧められる飲み物は、母乳や育児用ミルク、水で、0歳の間は牛乳を飲むことは勧められていません。貧血や消化管出血のリスクとなるためです。しかし1歳を過ぎた子では、栄養補給のため牛乳を飲むことが勧められています。

このガイドラインでは、2歳になるまでの推奨量は約450~700ミリリットルです。2歳を過ぎると、栄養摂取の中心は固形物になってくることを理由に、推奨されるのは低脂肪乳や無脂肪乳に変わり、量も一日450~600ミリリットルまでとなっています。アレルギーなど特別な理由がない限り、植物性のミルクは勧められていません。

もちろん体格の違いもありますので、必ずしも450ミリリットル以上ということではないと思います。また、肥満がなく、普段の食事でも脂肪分が非常に多くない場合には、2歳を過ぎたからといって低脂肪乳に変えなければいけないとも思いません。とはいえ、牛乳は1歳過ぎからで、特に1歳台は積極的に飲ませてあげるというのは、日本でも当てはまる部分かと思います。

次に、フルーツジュースについてです。ここでいうフルーツジュースは、100パーセント果汁のジュースのことです。果物そのままを食べるのが一番望ましいのですが、果物が十分摂取できないときには、3歳までは1日に約120ミリリットル、4~5歳なら1日に約120~180ミリリットルまで飲んで良いとされています。逆に、100パーセントでないフルーツジュースや、無果汁のジュース、その他の甘い飲み物を乳幼児が飲むのは推奨されていません。

習慣的に甘い飲み物を飲むのは、肥満だけでなく虫歯のリスクになります。水分補給としてジュースを飲ませるのは避け、嗜好品として、100パーセントのフルーツジュースを1日あたりコップ1杯程度に留めるのがよいと思います。

最後に、フォローアップミルクについてです。今回のガイドラインでは、フォローアップミルクも甘い飲み物と同様、推奨されない飲み物に分類されていましたが、ここは日本では状況が違います。

実は我が家でも、牛乳のほかにフォローアップミルクを飲ませたりしています。フォローアップミルクは、鉄やビタミンDといった栄養素を補給できるメリットがあるからです。

今回のガイドラインで非推奨となった理由をみてみると、飲むと健康に良くないという証拠はないが、アメリカの幼児の栄養は充足しているため、あえて飲む必要はない、ということのようです。

それでは、日本の幼児の栄養摂取状況はどうでしょうか。平成29年国民健康・栄養調査によると、例えば1~6歳の子どもの鉄分摂取量は、女性で1日平均4.1ミリグラム、男性で4.4ミリグラムです。この年代の摂取推奨量は1日4.5~5.5ミリグラムですから、明らかに足りていません。

食事から鉄分などの栄養をしっかり取れるに越したことはありませんが、子どもがお肉や小松菜をパクパク食べてくれるとは限りません。我が家の食事を考えてみても、栄養摂取がきちんとできているとはとても思えないのです。現状では、食事以外で栄養素を補う必要のあるご家庭もあるでしょう。

そこで候補となるのは、鉄強化した牛乳やおやつ、そしてフォローアップミルクです。市販の鉄分強化した牛乳は、200ミリリットルあたり3ミリグラム以上の鉄分が入っています。1日1杯程度なら良いのですが、それ以上になると、幼児には多すぎます。フォローアップミルクは甘味はしっかりありますが、大手メーカーのものは砂糖は入っておらず、乳糖やガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖が入っているようです。鉄入りのおやつも手軽で良いと思いますが、砂糖を控えるという観点から言うと、砂糖の入っていないおせんべい等が良さそうです。

健康に良い食事は大切ですが、大人だってたまには甘いおやつを楽しんだりするものですし、窮屈すぎるのも大変です。あくまで飲み物は水かカフェインレスのお茶、という基本に立ち返りつつ、果物のジュースや鉄分強化したおやつ、フォローアップミルクなど、ストレスにならないよう柔軟に取り入れていけたら良いのではないかと思います。

(※)”Healthy Beverage Consumption in Early Childhood” Healthy Eating Research

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