気になる 「RSウイルス」 感染症
小児科専門医の杉原です。
なぜか、去年全く流行らなかったRSウイルス細気管支炎。
今年、春がおわっても季節外れのRSウイルス細気管支炎が流行しています。
6月中旬は千代田区の西側でしたが
6月21日あたりからは御茶ノ水から秋葉原の間にある保育園にも出現するようになりました。
そこで、すこし解説をしておこうと思います。
毎年ふつうは寒い季節になると赤ちゃんがゼーゼーする風邪が流行ります。
この風邪の原因で一 番多いのがRSウイルスです。 「RSウイルスの気管支炎で入院した」 という話を耳にすると心配になりますよね。
保育園でうちの子がもらったらどうしよう・・・なんて。
実はRSウイルスは2歳までには誰でも1回は罹るありふれた風邪なんです。
確かに乳児期は気管支炎になる頻度が高いのですが (1歳未満では30%) 、
全員が重くなるわけではありません!
その後も感染を繰り返しますが、 回数を重ねるほど症状は軽くなり、 3歳以降では 「咳のガンコな風邪」 程度で経過することがほとんどなんです。
乳幼児では咳が治まった後でも人にうつる力が数週間も残るので、 感染予防対策を 尽くしても保育園・幼稚園での流行を止めるのは困難です。
大切なのは以下の<赤ちゃんの重症化兆候>を見逃さないことなんです!!
【黄信号] 呼吸が荒い、 哺乳量低下傾向 →医療機関受診しましょう
【赤信号】 呼吸が苦しそう、顔色が悪い →夜でも待たずに救急病院へ受診しましょう
■ 感染経路 気道分泌物(痰、 唾液) の飛沫や直接接触
■ 潜伏期間: 2~8 (通常4~6) 日間
■ ウイルス排泄期間: 3 ~ 8日間 (乳幼児では最長3~4週間)
■症状 乳児期の初感染の場合、 鼻汁・咳・熱で始まり、①~③いずれかの経過をとります:
① 軽症 (70%) : 上気道炎症状のみ、 数日で軽快治癒
②中等症 (30%) 数日後に喘鳴 (ゼーゼー) などの下気道炎の症状出現
③ 重症 (3%) : 強い喘鳴・呼吸困難 ・ 顔色不良 無呼吸発作 (生後1ヶ月以内)
年長児以降はこじれることはまれで 「咳のガンコな風邪」 程度で経過します。
※ハイリスクの子ども (低出生体重児、 先天性心疾患 肺の病気、 免疫力が低下する病気) は重症化しやすいのでシナジス®注射による予防措置が行われます。
当院でも積極的に接種をおこなっています。
■ 診断: 迅速検査 (鼻腔ぬぐい液) で確定します
■治療 残念ながら特効薬はありません。
対症療法 (咳止め、 痰を切る薬、鼻汁・痰の吸引など) が中心となり、 重症例では入院治療が必要になります。
■ RSウイルスに罹ると喘息になる?
RSウイルスによる細気管支炎にかかった子どもはその後も風邪を引く度にゼーゼーす る傾向がありますが、 数年の経過で減少します。
将来喘息発症の引き金になるかどうかは学会レベルでも議論中で結論が出ていないんですね。
■予防 マスク、うがい、 手洗い (手についたRSウイルスは30分間生きています)